3試合で2本塁打&初登板初勝利
「才能に疑余地はない」も「結論は時期尚早」

 2001年シーズンに走攻守で圧倒的なパフォーマンスを披露し、新人王とMVPを同時受賞するというメジャー史上2人目の偉業を達成したマリナーズイチロー外野手を彷彿させるほどの、巨大なインパクトを残している大谷。イチローに続く、メジャー史上3人目の快挙は可能なのだろうか――。アメリカの名物コラムニストが二刀流のスーパースターの衝撃の1週間とともに、今季の賞レースも占ってくれた。

「アンビリーバブルだ。真剣に彼はアンビリーバブルだ。しかし、全てにおいて、何かを結論づけるには時期尚早だ。今年に関しての最大のテーマはいかに投手として相手打者に、打者として相手投手に適応していくか、だろう。彼は打者としても投手としても学ばなければいけない。才能に疑いの余地はない。だが、メジャーリーグは修正のスポーツ。相手も次々に対策を講じてくる。オオタニには他の選手よりも2倍以上のプロセスが存在するのだから」

 こう手記を寄せてくれたのは、米スポーツメディア「スポーティングニュース」のジョセフ・ディポリート記者だ。

 ロサンゼルスを拠点にエンゼルスドジャースというメジャー球団のみならず、NHLロサンゼルス・キングスアナハイム・ダックスMLSなど様々な競技で取材活動を展開。取材記者会見でも激しい身振りとともに大谷やマイク・ソーシア監督に質問をぶつけている名物コラムニストだ。

「だが、私の取材したところでは、彼はそれが可能なタレントだ。ソーシアは大谷に圧倒的な冷静さ、非常に高度な分析力があると言っていた。真剣な野球への取り組みも光る。それを全て加味しても、本当の意味で適応するには必ず時間が必要になると思う。我々にも忍耐力が必要だ」

 大谷はスプリングトレーニングで投打に修正を重ねた。オープン戦では打者としては打率.125、投手としては防御率27.00という成績だったが、開幕後は投打に大車輪の活躍を見せている。それでも、試合の合間の打撃練習やブルペンで試行錯誤を続けている。

新人王は「イエス」、MVP獲得には3つのハードルが存在?

「ここまでは文句のない活躍だ。投手としては6回3失点でクオリティスタート(QS、6回以上を投げて自責3以下)。打者としては3試合で2本塁打。しかも、サイ・ヤング賞投手のクルーバーから打った。だが、どんなにいい選手にだって、スランプの時期は訪れる。その時に、彼がどんな対応力を見せるのか。ソーシアが話していた素質を見せることができるのか。アメリカと日本のファンとメディアの注目というプレッシャーにいかに耐えきるか。個人的にはこの2点に注目している」

 ソーシア監督は分析力、冷静さという「人間・大谷」の資質の高さを証言していたという。大谷が長いシーズンでスランプを迎えた時にいかに対処するのか。窮地での対応力にディポリート記者は注目していた。

 今から17年前、オリックスからマリナーズに移籍したイチローがメジャーを興奮のるつぼに巻き込んだ。打率.350、8本塁打、69打点、56盗塁。1975年のフレッド・リン氏(レッドソックス)に次ぎ、史上2人目となるMVPと新人王の同時受賞を達成する金字塔を打ち立てた。

 では、大谷は史上3人目の偉業を達成できるのだろうか。

「新人王に関してはイエスだ。そもそも、彼はメジャー上陸前から新人王を獲得できると言われていた。MVPに関しては難しいだろう。イチローとは状況がまったく違う」

 ディポリート氏はこう語る。米国野球殿堂入りが確実視される栄光の「背番号51」のケースと比較した際、MVP獲得へのハードルは3つ存在するという。

「まずは年齢差だ。イチローは、現在のオオタニよりもより日本で圧倒的な成績を残し、より成熟した状態でメジャーにやってきた。当時は27歳。大谷はまだ23歳。フィジカル面においても、メンタル面においても、4歳という年月とキャリアの差は少なくない」

 高校卒業後に日本のプロ野球の扉を叩いたイチローと大谷。イチローNPBで9年間プレーし、7年連続首位打者という実績とともにシアトルにやってきた。一方、大谷はまだ23歳。メジャーではプロスペクトと呼ばれる有望株の年代だ。

 そして、ルーキーイヤーのチーム状況には格段の差があるという。

「もう一つは、当時イチローは現在のエンゼルスよりも比べ物にならないほど強力な戦力を誇る球団に加入した。あの打線は凄まじいものだった。投手陣もエンゼルスと比較にならないほど充実していた。あのシーズン116勝を挙げた。今でも破られていないレギュラーシーズン最多タイ記録なんだ。つまり、彼には多大なサポートが存在したんだ」

MVP獲得に立ちはだかる、強力なライバルの存在

 現在、打撃コーチを務める指名打者エドガー・マルチネス二塁手ブレット・ブーンら強打者揃いだったマリナーズ。116勝46敗、勝率.716という圧巻の成績を残したチームは当時最強だった。

「オオタニにも、もちろんサポートは存在する。まずはトラウトがいるのは大きい。プホルスもいる。攻守においてシモンズ、コザートもいる。だが、当時のシアトルのクオリティとは格段に差がある。トラウトはメジャー最高の選手だが、それでも選手層という部分ではあまりにも差がある」

 昨季の成績は天才マイク・トラウト外野手を擁しながらも80勝82敗で借金2だった。今季は大谷に加え、ザック・コザート、イアン・キンズラー内野手を補強。内野の陣容は充実しているが、それでも「116勝」という金字塔を打ち立てたイチローのルーキーイヤーのマリナーズとは比較にならないという。

エンゼルスはここ数年、先発投手の故障が相次いでいる。先発ローテーションが1シーズン持ちこたえられるなら、プレーオフの可能性も出てくるだろう」

 ラインナップの実力差はチームからのサポートの差を生み、個人成績にも影響を与える可能性があると、ディポリート氏は指摘する。

 そして、最後のハードルとして挙げたのは、MVP争いのライバルの存在だ。

「MVP争いに関して言えば、リーグのライバルの存在もある。アメリカン・リーグにはダイナミックな選手が揃っている。昨季MVPのホセ・アルトゥーベ、カルロス・コレアというアストロズの2人、コーリー・クルーバーも間違いなく候補に入ってくる。去年、マーリンズナ・リーグMVPに輝いたジャンカルロ・スタントンもヤンキースにやってきた。レベルは極めて高いが、鉄板の存在はいない。オオタニは候補の1人になれる可能性はある。それだけでも、凄いことだ。だが、全ては時期尚早だ。オオタニが状況にいかにうまく対応していけるのか、シーズンの推移をもう見てみたい」

 同地区の昨季王者アストロズを筆頭に、若きタレントがひしめく群雄割拠のア・リーグ。ライバルが活躍する中、二刀流のスーパースターは際立ったパフォーマンスを見せることができるのか――。ただ、開幕1週間で衝撃のパフォーマンスを目撃した名物コラムニストは、MVP受賞の可能性を否定することは最後までしなかった。

 

 

 

 

 

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